人気ブログランキング | 話題のタグを見る

耳鳴りがする・耳鳴・頭が鳴る

概要


自分にしか聞こえない耳鳴が自覚的耳鳴で、他人にも聞くことの出来る耳鳴が他覚的耳鳴です。他人にも聞こえるといっても、ごく小さい音が出るだけですので、オトスコープというゴム管を、医者と患者が片側ずつお互いの耳に入れることにより、何とか聞こえるレベルです。原因は耳の周りの、筋肉の痙攣や血管の雑音など、聴覚に直接関係ない部位の異常なので、通常 難聴は伴いません。
他覚的耳鳴は血管性耳鳴といって耳の周囲の血管内を血液が流れる際の乱流によるもの、筋性耳鳴という筋肉の異常収縮、けいれんなどによるもの、その他に分かれます。

血管性耳鳴の原因は頸動脈狭窄、グロームス腫瘍、動静脈瘻などがあります。筋性耳鳴の原因となる筋肉は、アブミ骨筋、鼓膜張筋、耳管周囲筋や軟口蓋などです。その他にも、耳管の開閉や顎関節運動に伴う耳鳴があります。

それに対して、自分にしか聞こえない耳鳴は自覚的耳鳴といい、耳鳴のほとんどを占めます。難聴を伴うもの、伴わないもの(無難聴性耳鳴といいます)、いずれもあります。
耳鳴の治療は原因になっている疾患を治療するのがまずは先決ですが、聴力に変動がなくて耳鳴だけが続くときには、耳鳴りそのものが治療の対象となります。

診察


問診で耳鳴りの程度、難聴やめまいを伴うのか、生活へ支障が及んでいる程度などを確かめます。
視診では耳の中、特に外耳道や鼓膜の様子をよく確かめます。

検査


聴力検査は必須です。難聴があればその治療が優先されるからです。
耳鳴りの音質や大きさを客観的に測る耳鳴検査というものもありますが、最近では以前ほどには重んじられなくなりました。客観的な耳鳴の程度を知るよりも、患者さん本人が耳鳴をどれほどのものと感じているかという主観的な程度の方が重要と考えるようになってきているのです。それは治療の目標が耳鳴そのものを止めることよりも、耳鳴があっても意識に上ってこないように自分をコントロール出来るようにすることに、治療の目標が違ってきているためでもあります。
ということで今日の耳鳴診療では、耳鳴の程度を測る指標としては、THI ( tinnitus handicap inventory )という問診表を使って、耳鳴による生活への支障の程度をスコア化したものを重要視して、耳鳴の重症度や治療効果の判定に使っています。

耳鳴の原因となりうる疾患


難聴を来す疾患全て。その他、難聴がなくても耳鳴の起こることはしばしばありますし、原因となっている耳の疾患が落ち着いてからも、耳鳴だけが残ることもあります。耳以外の病気でも、うつ病などではしばしば耳鳴が起きます。

治療


耳鳴の原因となっている基礎疾患があれば、まずはその治療を優先して行います。原因のはっきりしない耳鳴、基礎疾患が治ってからもなお耳鳴のみが続く時には、耳鳴そのものが治療の対象となります。
耳鳴の治療には、まず耳鳴に対する過度の心配を取り除くのが第一歩です。
さらに中等症以上では、音響療法を行います。これは簡単に言えば静寂を避けることです。
耳鳴の日常生活への支障のレベルが強い時、つまり重症の耳鳴では、さらに専門的はカウンセリングや時には抗うつ剤などが必要になります。

なお、耳鳴については拙ブログ「耳鼻科医の診療日記」にもいろいろと書いております。以下の記事も参考にしていただけるとありがたいです。
耳鳴について考える 〜耳鳴のいろいろ〜
新しい耳鳴の治療 〜 TRT ~
耳鳴について考える 〜聴覚伝導路〜
耳鳴について考える 〜音と脳の関係〜
耳鳴について考える 〜苦痛の連鎖〜
耳鳴について考える 〜治療について〜

# by otologist | 2010-10-31 22:16

耳がこもる・耳のつまった感じ・耳閉感

概要


耳のつまる感じというのは、専門用語では耳閉感(じへいかん)といいます。耳閉感はごくありふれた症状で、誰でも1度や2度は経験していることと思いますが、原因はいろいろなことが考えられます。

診察


問診では聞こえは悪くないか、カゼをひいていなかったか、耳に何か入れなかったか、ストレスが多くなかったかなどを確認します。
視診は、顕微鏡で耳の中を丹念に診ることにより、外耳や中耳の病変はおおよそ把握できます。外耳、中耳に異常がなければ消去法で内耳の疾患の可能性が高くなります。中耳炎があれば鼻の中もよく診る必要があります。

検査


聴力検査(標準純音聴力検査)で難聴の有無や、もし難聴があればそのタイプ(伝音難聴なのか感音難聴なのか)を調べます。伝音難聴であれば、滲出性中耳炎の可能性が高くなりますので、ティンパノメトリィで鼓膜の響きやすさを確かめます。

考えられる疾患


外耳に原因のある耳閉感
耳垢栓塞(耳垢が外耳道につまってしまった状態)、外耳炎、外耳道異物(水滴、髪の毛、綿棒の先端、子供ではプラスチックのおもちゃや消しゴムなど)

中耳に原因のある耳閉感


中耳に原因があるものとして最も多いのが、滲出性中耳炎です。大人も風邪引き後などになることがあります。原因は耳管の働きが悪くなることです。
その他の中耳疾患では、好酸球性中耳炎で効率に耳閉感を生じます。好酸球中耳炎は喘息にともないやすい中耳炎で、中耳に粘液が貯まることにより難聴を生じます。滲出性中耳炎に似ていますが、難治性ですし感音難聴も合併しやすいので注意が必要です。

内耳に原因のある耳閉感


内耳疾患では、急性低音障害型感音難聴で片側(まれに両側)の耳閉感が生じます。
メニエール病の発作時にも耳閉感が起こります。耳鳴やめまいを伴うのが特徴です。

治療


外耳道の異物や耳垢栓塞では、これらを取り除けば耳閉感は治ります。
外耳炎では耳の消炎処置と抗生剤内服など。
滲出性中耳炎、好酸球性中耳炎では、まずは鼓膜切開やチュービングで鼓室内の貯留液を除去します。鼻や副鼻腔に炎症を伴っていることが多いですから、鼻処置やネブライザー療法も行います。マクロライドの少量長期療法や、抗アレルギー剤内服を行うこともあります。
内耳疾患で耳閉感を生じるのは、「内リンパ水腫」という病態が原因のことが多いですから、これを取り除くことが必要です。具体的にはストレスを避けることと、高浸透圧利尿剤の内服です。その他には内耳の代謝を助けるために、ビタミンB12やアデホスなどを内服することもあります。

# by otologist | 2010-10-31 22:10 | 耳の症状